【石川県立こころの病院院長、日本公的病院精神科協会会長 北村立】
2023年9月にレカネマブ、24年9月にドナネマブと、2つの抗アミロイドβ(Aβ)抗体薬が承認され、わが国の認知症医療も新しいステージに入った。
抗Aβ抗体薬はアルツハイマー病の原因物質とされるAβを脳から排除することでアルツハイマー病の進行を抑制するとされる。しかし、認知症の進行にはリン酸化タウが大きく影響しているといわれており、認知機能が低下した時点で、すでに神経細胞内にはリン酸化タウが沈着しているので、抗Aβ抗体薬でAβを除去しても認知症の進行を止めることはできない。
つまり認知症を治すことはないが、早期から開始すればするほど効果が高い可能性があり、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)からの使用が推奨される。
以前から抗認知症薬として使用されているドネペジルやリバスチグミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬は、患者によっては会話の反応が良くなる、意欲が出る、言葉の数が増えるといった効果が感じられたが、レカネマブの場合、認知症の進行を27%抑制するというだけで、本人や家族が実感できる効果はない。この27%は、期間にして18カ月当たり5-6カ月に相当するとされており、
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